№59 ☆ 木津川事件①
ちょうど暑い夏も終わる頃、気候も良く身体に優しい
季節だった・・・この日は千の妹達、家族と大勢で
バーべキューをしようと言う事になり3台の車で
出かける事になった。
親戚が飼っている犬1匹連れて行くらしく急遽、
この僕も連れて行く事になったようだ・・・
正直 あまり行きたくなかったのを憶えているよ
僕は、その時ハヤトと一緒に居たんだが・・・
わざわざ千がアブダビまで呼びに来たんで・・
仕方ないから千の方へ戻ったんだ
「ハヤト・・少し出かけて来るよ・・・千達や親戚皆で
川に遊びに行くらしい・・」
「川?・・・アブニャイなぁ~大丈夫ニャノかぁ?
川には近づいたら、駄目だぞう・・・」と目を掠めて
ハヤトは僕に言ったのを何故か良く覚えている。
そうして僕達は出発した・・・1時間も車に揺られ、
窮屈だった・・隣でマックスと言う犬は、やけに尻尾を
振り はしゃいでいる・・・何がそんなに嬉しいんだ?
理解に苦しむよ・・・。僕はいつの間にか気持ち良く
寝ていた 知らぬ間に現地へ到着したようだ。
大きな木津川と言う所だった・・・川の周り一面は、
1メートル程の高さのある草が生い茂っている・・・
僕達が選んだ場所は丁度、陸橋の真下付近だった。
大きな敷物を敷き、荷物を置きバーベキューの準備
手際良くそれぞれが動いた・・・サクラ達、子供は川に
まるでイタズラをするかのように 少し触っては逃げ去り
小石を投げたりと爽快な笑顔でとても自然とマッチ
していた。相変わらずあのマックスと言う犬は尻尾を
振り振りして走り回っている・・・。僕は?・・・ペット用の
バックの中だ・・・。怖くて出れずにいる・・・・情けねェ・・・
サクラ達が僕の側に来た バックから出て一緒に
遊ぼうと言うんだ・・・僕はサクラに弱い。気は乗らないけど
遊ぶ事にしたんだ サクラや親戚の子供達と随分遊んだ
緩やかに流れる川・・・優しい風・・・生い茂った草の
リズムカルな動き 自然な美しさに
僕は夢中になり過ぎた・・・。日も沈みかけた頃
千達は後片付けを始め、皆の目は
僕から遠のいていた・・・その頃、僕は面白く動くバッタに
気を取られ追いかけ回していたんだ・・・暫く経った。
気が付けば僕の周りには、人の気配が無かった・・・
千の低く、あの落ち着いた声が聞こえない
サクラのかん高く透き通った声も聞こえない
親戚の叔母さんも子供達の声も叔父さんの声も
聞こえない・・・。やたらと陸橋を走る車の音と
静かに唸る風の声・・・そして僕の心臓の叫ぶ音だけが
聞こえるんだ・・・こんなに怖い思いは初めてだった。
千達は僕をずっと探していた・・・随分と長い間・・・
僕は見つからない程、はるか遠くに来ていた
これだから猫と言う生き物は苦労するんだ・・・。
僕はこのまま千達と逸れて・・・この場所でこの木津川で
死ぬんだ・・きっと・・・N市で母さんと逸れた事を僕は
思い出した。 あの時はまだ生まれて間も無かったのに
・・・今はあの時より心持、不安だ。
幸せに慣れ過ぎたんだろう 年甲斐も無く不安だ・・・。
あたりは薄っすらと見えるくらいの暗さになって来た
すっかり人の気配は無くなった。
千は・・・親戚の人達も随分、僕を探してくれたらしく
皆、疲れていたので、一先ず、この日は帰る事にした
と言っていた。 「あの子は異常に車を警戒して
いるから、この陸橋は絶対に渡らないわ!
思ったよりも怖がりだから、ここから動かないと思う」
と・・・割と正しい判断をしていた。
泣くサクラをイチが、抱き・・千は僕を置いて行く
辛い思いを閉じ込めて車を走らせ、木津川を後にした。
(木津川事件はマジ
ヤバカッタぞっ!)










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